近い将来「糖尿病」という名称が変更される?!
患者の約9割が「糖尿病」という病名に不快感
長らく使用されてきた「糖尿病」という病名が近い将来変更されるかもしれません。
2022年11月、日本糖尿病協会が都内で開いたセミナーで「糖尿病」の名称を変更する方針であることを発表しました。
糖尿病は血糖値の高い状態が続いている状態、ということは周知の事ですよね。
しかし病名である「糖尿病」という文字からは少し違ったニュアンスを受けるかもしれません。
同協会が糖尿病患者を対象に行ったアンケート調査では1068人の回答が得られ、そのうち実に約9割の方が「糖尿病」という病名に不快感や抵抗感を持っているということが分かりました。
特に「尿」という言葉が持つ負のイメージへの懸念が多かったようです。
また同時に、疾病の実態を正確に表す言葉に病名を変更するよう希望する人が8割に上ったそうです。
このアンケート調査では回答者の5割以上の方が、病名が変更されることで「糖尿病」が持つマイナスイメージが変わることに期待をしている、ということも分かりました。
過去には痴呆症が「認知症」に、精神分裂病が「統合失調症」に変更されてきました。
2002年に統合失調症へと名称が変更された際には、患者の家族会が名称変更の要望を出してから変更されるまで、日本精神神経学会で議論された9年の月日がかかったといいます。
「糖尿病」からの名称変更も長い月日がかかることが予想されますが、今後1~2年の間に新名称が提言されるようです。
偏見を生む誤った認識
「太った人が罹りやすい病気」と認識されがちな糖尿病ですが、糖尿病には大きく2つのタイプがあります。
小児や若年者での発症が多くみられインスリン依存性の高い1型糖尿病と、遺伝的要因と生活習慣によって発病する2型糖尿病です。
前者は急激に、後者は徐々に血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が高くなっていきます。
糖尿病患者全体の90~95%が2型糖尿病であることもあり、一般的に「糖尿病」と表現した場合2型糖尿病を示すことが多いです。
2型糖尿病は遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、環境的素因としての生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が加わり、インスリンの相対的な不足に陥った場合に発症する糖尿病です。
一般的に生活習慣病と称されるタイプの糖尿病が2型糖尿病ですが、インスリン分泌能の低下が不可欠です。
ですので2型糖尿病の方は生活習慣の乱れだけではなく、大なり小なり糖尿病になりやすい体質を持っている方、とも言えます。
過去の疫学研究では2型糖尿病患者の同胞では2~3倍、両親が2型糖尿病である場合は3~4倍発症する確率が上がるといわれています。
しかし家族に糖尿病の方がいない場合、糖尿病に遺伝的要因があるということすら認知されていないケースも多くあるようです。
その一方、生活習慣病という言葉が表すように「糖尿病=生活習慣の乱れ」というイメージが連想され、糖尿病は「だらしない」とか「生活が乱れている」と周囲に見られがちなのが現状にあるように思います。
そのような偏見を恐れ、健康診断などで血糖値が高いことが発覚した後も家族や同僚などにも相談せず、そのまま隠してしまう方も多いようです。
そのような場合、必然的に治療にも積極的になれず症状を悪化させてしまうケースに繋がってしまいます。
実際以下のようなデータもあります。
2017年度の厚生労働省の調査によると、糖尿病患者とその予備軍の数は約2,000万人と推計されているにもかかわらず、実際に入院したり通院し治療にあたっている方は330万人程度しかおらず、治療に積極的ではないことがこの数字からも如実に見て取れます。
名前変更の必要性
このように定着した偏見の目はイメージだけにとどまらず、「生命保険や住宅ローンに加入できない」「就職が不利になった」「怠け者のような目で見られる」などのようなケースにつながることもあるようです。
上記のようなケースは稀なことだとは思いますが、事実「糖尿病」という病名から引き起こされていることだということは間違いないので、このような事態を引き起こさないためにも病名の変更の必要性が問われているわけですね。