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2022/10/17 ミネターブログ

糖尿病になりやすい日本人、なりずらい欧米人

糖尿病になりやすい日本人、なりずらい欧米人

成人の6人に1人が糖尿病の日本人

最近ちょっと太ってきたな・・・
と自分のお腹周りの脂肪を気にしている方も多いかと思いますが、
欧米系の方の「超肥満体形」をテレビなどで見かけると、まだまだ大丈夫かなと
安心してしまう方もいるかもしれません。

ですが単なる体形の話ではなく「糖尿病」にフォーカスすると、
私たち日本人の肥満は捨て置けない問題なのだと気づかされます。

国際糖尿病連合(IDF)が2021年に発表した推計によると、
世界に糖尿病を罹患している人の数は5億3,700万人に上るそうです。
実に成人の10人に1人(10.5%)が糖尿病だということを表しています。

これは同連合が2019年に推計した値より16%も増加しており、
コロナの影響もあってか急速に糖尿病が広まっていることを表しています。

このまま対策なしに経過した場合、
2045年までに糖尿病人口は現在より46%増加すると推測されています。
これは世界中の成人の8人に1人が糖尿病に罹患しているという事態です。

それでは我々日本人はというと、厚生労働省による令和元年の「国民健康・栄養調査」によると
「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性で調査対象者の19.7%、女性で10.8%にもなります。

男女平均すると成人の15.25%(6人に1人くらい)が糖尿病であるということになり
成人のが糖尿病ということになるので、世界の国々に比べても糖尿病人口比率が高いことが伺えます。

糖尿病は肥満の人がなる病気、という印象がありますが、
例えば欧米人に比べて日本人は肥満の人って少ないですよね。

欧米には日本人の肥満の人が小さく見えてしまうような「超肥満」の方が多くいらっしゃいます。
実際アメリカ国民全体で、18歳以上の肥満(BMI30以上)の方の比率は33%にも上ります。
これは日本の約10倍の多さです。

ですが糖尿病の罹患率は日本の方が高いのです。
これは対アメリカにだけ言えることではなく、ほとんどの欧米諸国に比べ
それほど太っていない日本人に糖尿病が多いという事実があるのです。

これは私たち日本人が古来よりどのような生活様式で過ごしてきた民族なのか、
というルーツに関わる要因が大きく関わっています。

 

日本人は糖尿病になりやすいルーツを持つ

糖尿病で問題になる糖質を多く含む食材は、米や小麦などの穀物が代表的です。

長い人類の歴史において、穀物の栽培は約1万2千年前の中東地域(チグリス川とユーフラテス川で挟まれた地域)で始まり、
すぐにヨーロッパに広がりました。
すなわちヨーロッパの人たちは穀物を多く摂取する生活に変化してから1万年以上の長い期間経過しています。

糖質主体の食事が増えてきたことにより、その地域の人々は長い期間をかけ
糖質が主体の食事に体が適応するよう進化してきたと考えられています。

それに比べ日本で農耕が本格的に行われるようになったのは約3千年前と言われています。
また一般市民にまで糖質主体の食事が浸透したのは江戸時代中期(約300年前)になってからです。

この「糖質に馴染んできた期間の差」が糖尿病のなりやすさと関連してくるのです。

穀物の多い食事に古くより馴染んできた欧米人は糖を処理する能力、
つまり「インスリンの分泌能力」が高く肥満になっても糖尿病になりづらいのです。

インスリンを作る膵臓の重さが、日本人で平均70g~100gであるのに対し、
白色系欧米人では100g~140gと日本人の1.5倍~2倍にもなります。
その分インスリンの分泌能力も高いというわけです。

欧米人の超肥満の方でも糖尿病になりづらいのは、肥満によりインスリン抵抗性が強まっても
十分な量のインスリンが分泌されているため糖尿病になるリスクが低いと推測できます。

糖の代謝能力の低い日本人が同じように肥満になってしまえば、
もともとのインスリン分泌量が欧米人に比べ少ないため糖尿病になってしまう、というわけです。

さらには生活習慣の欧米化が進むことによって食事内容も一昔前とは大きく変わり、
肥満になりやすい環境になったことも影響を与えています。

このように遺伝的な要因と環境的な要因が重なることにより、現代の日本では糖尿病が蔓延するようになったのです。

 

糖質は三大栄養素の一つ

インスリンの分泌能力の低さや、生活の欧米化が招く肥満は糖尿病のリスクを高めますが、
糖質自体は体にとって敵ではなく、生態活動に必要不可欠な三大栄養素のうちの一つに数えられる栄養素です。

各々の体の状態や生活習慣に合わせ適切な量の糖質を摂取することが、
健康を維持するうえでも糖尿病のリスクを回避するうえでも重要です。

しかし現代は飽食の時代。
さらにはファストフードやデフレも重なり安価にお腹いっぱいになれる食事が身近に溢れています。
お出かけ先では誘惑が多く、コンビニでもスーパーでも簡単に高糖質のスイーツなども買えてしまいます。

また昔に比べ交通手段も飛躍的に発達し、日常生活も便利になったことから運動量も減少しています。

実際2019年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人男性の3人に1人、女性の4人に1人が肥満であるとされています。
「コロナ太り」も近年の肥満傾向をよく表している言葉ですよね。

 

肥満を回避し血糖をコントロールするためにもダイエットの実践は有効な一つの手段です。
数年前より「抗糖化」が流行り「糖質制限」や「低糖質」などのキーワードは
ダイエットの定番になってきています。

しかしこの「糖質制限」、将来的な体への影響はまだよくわかっていないのが現状です。

糖質は生態活動に必要な三大栄養素のうちのひとつです。
この糖質を極端に制限した食生活を長期間続けた時、また糖質制限をやめた後の反動がどうなのか、
エビデンスがまだありません。

糖尿病の方で糖質を制限した食事が必要な方は別として、
ダイエットのために極度の糖質制限を長時間行うことは、将来的なリスクが潜んでいる可能性を念頭に置いておいた方が良いのかもしれません。